所得拡大促進税制

試算表の数字を用いて簡便的に検討を行うことが出来る規定です。

平成30年度の税制改正もありましたので、所得拡大促進税制について書き出してみたいと思います。

所得拡大促進税制とは

個人所得の拡大を図るため、企業の労働分配(給与等支給)を促す目的で創設された規定です。

従業員さんの給与・賞与の支給額が増えた場合には、この規定の適用可否につき検討をする必要があると思います。

以下、改正前・改正後それぞれの所得拡大促進税制の要件等について記載していきます。


所得拡大促進税制(改正前)

(中小企業者等のH30.3.31までに開始する事業年度に適用(旧 措法42の12の5①))


適用に当たっての要件は3つありますが、次の①②の要件は試算表の従業員給与・賞与の集計のみで簡便的に判定が可能です。

当期の給与等支給額≧基準事業年度(注1)の給与等支給額×103%

注1)H25.4.1以後に開始する最初の事業年度の前の事業年度(6月決算の場合はH25.6期)

(事業年度の月数が異なる場合は当期の月数に合わせて調整します)

当期の給与等支給額≧前期の給与等支給額

(事業年度の月数が異なる場合は当期の月数に合わせて調整します)


これらの要件を満たしているようであれば、顧問税理士に所得拡大促進税制の適用についてご相談してみては如何でしょうか。


①②については、国内雇用者(注2)以外への給与等支給額があれば除く必要があります。

注2)法人の使用人(役員、その特殊関係者、使用人兼務役員を除く)で賃金台帳に記載された者

(旧 措法42の12の5②一、措令27の12の5④⑤)


3つ目の要件は次の平均給与等支給額による判定です。

当期の平均給与等支給額(注3)>前期の平均給与等支給額(注3)

注3)当期と前期に給与等の支給を受けた国内雇用者(一般被保険者に限り、継続雇用制度対象者を除く)に対する給与等支給額の合計 / 左記の各月支給対象者数の合計

(旧 措法42の12の5②八九、措令27の12の5⑭~⑰)


以上、①②③の全ての要件を満たすと所得拡大促進税制の適用が可能となります。


税額控除額は次のいずれか少ない金額となります。

①(当期の給与等支給額△基準事業年度の給与等支給額)×10%

②法人税額×20%

なお、次の要件を満たすと上記の①の割合が10%から最大22%となります。

当期の平均給与等支給額≧前期の平均給与等支給額×102%


所得拡大促進税制(改正後)

(中小企業者等のH30.4.1以後に開始する事業年度について適用(措法42の12の5②))


当期の継続雇用者給与等支給額(注4)≧前期の継続雇用者給与等支給額(注4)×101.5%

注4)当期と前期の各月に給与等の支給を受けた国内雇用者(一般被保険者に限り、継続雇用制度対象者を除く)に対する給与等支給額の合計

(措法42の12の5③二、措令27の12の5③④/措法42の12の5③六七、措令27の12の5⑬~⑮)

当期の給与等支給額>前期の給与等支給額


税額控除額は次のいずれか少ない金額となります。

①(当期の給与等支給額△前期の給与等支給額)×15%

②法人税額×20%

なお、次の2要件を満たすと上記の①の割合が15%から25%となります。

当期の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×102.5%

②次の要件のいずれか

当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費×110%

経営力向上計画の認定を受け、経営力向上が確実に行われたことの証明を受けること


改正後の規定については、当期と前期の月数が異なる場合には、継続雇用者のカウント、月数調整の方法が複雑です。顧問税理士にご相談をされることをお勧めします。


追記

改正前は、どの事業年度でも基準事業年度の給与等支給額との比較が必要となるため、基準事業年度の給与等支給額が多い場合には、前期より当期のほうが給与等支給額が増えていても適用が出来ないケースがありました。

改正後は、前期の給与等支給額との比較となりますので、上記のケースでも適用が可能になります。

また、確定申告時の留意点ですが、欠損金額が生じるなど税額控除が取れない事業年度であっても適用要件を満たす場合には、確定申告書に所得拡大促進税制の別表・付表の添付を行うべきと思います。

その後の修正申告などで新たに法人税額が生じる場合にも、確定申告書に別表・付表を添付していればその給与等支給額をベースに計算を行うことが出来るためです。

(措法42の12の5⑤/旧 措法42の12の5④)

税理士, Jr.

税理士の実務(税務・会計)、税理士の試験について

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